●NAB2001 ちょっとレポート

ホントにひょンなことから、突然にNABのツアーに参加することになったのが出発の1週間前、ツアーの主催の方に多大の迷惑をかけつつ、あたふたとしているうちに、出発!となりまして、4月21日から、29日までUSAに行って参りました(おまけに、29日帰ってすぐに、IMIの講師顔合わせ、翌日も会議と入学式というハードスケジュール。飛行機が無事に着いてヨカッタヨカッタ)。

なんと、今回が私の初めてのアメリカ体験です。ヨーロッパに行くことはあっても、なかなか、アメリカに行く機会を逸していたのでした。SIGGRAPHに一度や二度は行っていてもおかしくないくらい、ながーくCGに関っているのに、、、

NABは、National Association of Broadcasters の略で、平たく言えば、本来は、放送関係の博覧会みたいなものだったのでしょうが、「e」がつけば、何かにつけて境界線が喪失している現在のような時代では、テレビ、ラジオ、テレコミュニケーション、マルチメディア、フィルム、インターネットとなんで
もありの展示会でした。

もちろん、展示だけでなく、様々なセッションがあったのですが、とても私の英語力では、、、ツアーで主催された、「アメリカにおけるデジタル放送の動向」というセミナーだけ拝聴しました。結構具体的な話で面白かったのですが、過渡期だなあという感じで、運用面ではまだまだ大変そうでした。

展示ブースのデザインは、大方は日本で見るものと大差はないようでしたが、、中には、やっぱり目を引くものがちらほら(▼写真左)
うまく撮れてなかったりで、ちょっと残念! マニュアルモードが充実したデジカメが欲しくなっちゃいました。それに、とにかく広くて大きくて、結構疲れましたが、でも、今回見た限りでは、「大きいことはいいことだ!」と言えそうです。

私の関心は、デジタル、ビジュアルがらみならなんでもという感じだったのですが、ブロードバンド、デジタルストリーミングの時代に、実際のところ、制作の段階での既存のメディアの扱いを、今後、一体どこかで区別することが必要だろうかと感じました。


情報が一旦デジタルに置き換わった瞬間、あとは、単にデバイスの問題だけになるわけで、実際、今回見てきた最新式の機器は、IN/OUTとも、自動的にスイッチングして多様なフォーマットに対応する方向で開発されつつあり、ハードルはまだまだ高いものの私には、あらゆる形態の情報を、ネットワークで一元管理できる数年先の未来を象徴しているように見えました。

もちろん、伝統的手法の”生”のアナログメディアは、まったく別です。これは、管理さえして欲しくもありません。私は、絵の具やパステルが大好きだし、写真だってフィルムの方が絵的には好きだし、音楽もスピーカーから流れる音より人の生の声や楽器の音のほうが好きですから。

などと、結構高尚な(?)ことも考えつつ、生真面目に色々な機材やシステムを見て回った訳ですが、でも結局のところ一番、興味深かったのは、SGIのブースで行われていた、Horrow man のメーキングでした。(▼写真右、▼写真下)


(邦題 インビジブル:ケビンベーコンが、とっても怖い透明人間になる例の3DCGバリバリの映画です。私は映画館で見ましたが、透明になる時の映像や追いかけて来る時が、とっても怖かったんです)

テクニカルディレクターの方が来られてかなり具体的なお話しをしておられました。重いからとビデオを持っていかなかったのがなんとも残念。筋肉のモデリングや、変形のプログラムなど、また、そのデータ量の膨大さや、キャプチャされている本物のケビン・ベーコンと、デジタルのケビン・ベーコン フェイシャルのキャプチャもかなりなもので(結構、無茶な扱いで、なんだか気の毒な感じのデータ取りもありましたが、、、ホント、俳優さんも楽じゃないですね)もう、口をあんぐりあけて見るしかないなあという感じで、この10数年来のテクニックと何よりマシンのキャパの変化に、ただただ、脱帽。

最近、医療関係に対する3DCGの利用がいろいろ言われていますが、このプログラムやデータなどは、かなり利用価値あるなあという感じで、きっと、どこかの医療機関と一緒にやってるんだろうなあとか思いました(実の所はしりませんが、、、)。

リサイクルの時代ですから、日本でもこういう基礎研究に使えるような技術とエンターティンメントとをうまくくっつけてプロジェクトにするとか、できるといいんだけど、、、研究機関も、うまくデータやプログラムを再利用して、CM会社に貸すとかすれば、けっこう研究費が浮くんじゃないかしらん?等と考えてしまいました。大阪的ですかね?

モーションキャプチャの展示も凌ぎを削っていましたが、以前と比べてその質の変化にけっこう衝撃を受けました。確かに、あとは質とインターフェースだけだなあとか、以前に思ったものですが、さすがに、目の当たりにすると見入ってしまいました。

かなりのスピードで踊り回る人の動きに対して、気になる程のとりこぼしもなくワンテンポ程のディレイはあるものの、ほぼリアルタイムに追随していると言ってよい程度でした。(▼写真右)
又、カメラの動きとの関係も同様に消化され、バーチャルスタジオを意識したプレゼンテーションになっており、かなりの人だかりでした。
こまでくれば、人体の動きや、表情のデーターベース化もずっと楽になるのだろうなあという感じでした(もちろん、初めのセットアップは、それなりに大変だとは思いますが)。アニメーションのデータベース化は、それなりに進んできていますが、今後は主なアプリに対応したモノがさらに安価に手に入るのでは、と期待してます。

実際のデータを見ていないのではっきりしたことはいえませんが、これくらいになると、映画どころかテレビ等でも、スタントマンに演技させて、良いとこ取りではぎ合わせるのも簡単だし、ある程度のデータベースができあがれば、場合によっては新たに撮る必要もなくなるし。随分、デジタル化の恩恵が見えてくるのでは?と思います。

少し、ずれますが。
BSでやってる海外ドラマの数々、例えば「ロストワールド」等を見ても、すでにペイした(?)恐竜のデータを使いまわして、よく出来たCG満載です。元々、ここまでの利用を考えて作っているかはともかく、ハリウッドのスタジオの膨大な建物セットが、今や場所をとらないスタジオセットや小道具(恐竜を小道具とはいいがたいですが)、その他もろもろとしてサイバースペースにますますそのキャパシティを増しており、しかもそれが、制作費の圧縮(又は、同じ制作費であればより豪華な仕様)に寄与していることは、確かだと思います。

今後も、ますます、仮想世界のデーターベースは膨張を続けることでしょうし。こうなってくると、コストに関してのスケールメリットはますます強大です。

せめて、私も、別のところで少しは努力しなくっちゃ。先々大変。言うは易し、行うは難し
あー大変。

時差ぼけた頭の中は、雰囲気だけで考えてるばっかりで未消化ですが、会場で申し込んだカタログ類が届いたら、もう少し冷静に考える必要がありそうです。

【なかがわ・よしこ】 arian@dream.email.ne.jp
1959年大阪生まれ。82年大阪教育大学理学科卒業。84年つくば博松下館CG制作をきっかけにCG作品制作を開始。85年「MAZE」日経CGグランプリゴ−ルド賞。
86〜99年NHK特集「人体」プロジェクト参加。「人体2 脳と心」「MEMORY」SIGRAPH入選(VIDEO REVIEW収録)。93〜98年「音楽ファンタジー夢」(NHK)。90年〜DIGITALIMAGE展に出品。現在、朝ドラタイトル「オードリー」(NHK)等。91年〜テレビ番組、展示映像、ゲーム等CG制作。

http://www.ne.jp/asahi/arian/image-composer/




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